第2章 屯所
「丞、います?」
「……今何刻や」
障子の奥からくぐもった声が聞こえてくる。
きっとまだ布団に包まれているのだろう。
「またあとで来ようか?」
「いや、もう起きる」
彼女とはここ新撰組で出会った
副長の側にいる者どうしやから
副長の次に多く話をしとるが
なかがエエわけとちゃう
馴れ合いなどいらんからな
只新撰組ではこいつの言葉はぜったいやから
局長も副長も
こいつの言葉には耳を傾け
策を練る
スッと座って襖を開く
丞は布団からでるとゆっくりと寝ぼけ眼で布団を三折りにしていく
まずは敷き布団
「昨日、桝屋にいったよね」
一瞬で目が覚めた
黙ったまま
つぎは掛け布団を畳む
「長州の浪人が会合をしてたんでしょ」
ドキリと心臓がなる
畳んだ布団達の上に枕を乗せて押し入れを開けた
抱えて押し入れに直そうとしたとき彼女の気配をすぐ後ろに感じた
「このままだと歩が死んでしまう。丞の失敗のせいでね。失敗するのは今日よ」
彼女の囁く声を聞いて心が力一杯動揺した
《死んでしまう》
重い言葉だった
なんとか
押し入れ布団を入れるとカタンと襖を閉めて
身体の向きを変えると
其処にいたのは《》ではなく
《巫女》だった