第2章 ヨコハマデート日和《太宰》
「残念だったな、もっと参考になると思ってたよ!」
『はあ…?』
「主人公の恋人のジェシーが食べられちゃうところとかさ、流石に真似できないよねぇ…。しかも痛そうだし」
『真似する前提で作られてる映画じゃないと思うんですけど…』
「確かにそうかあ」
何とも緩やかすぎる会話だ。
仮にも男女が二人きりで映画を見たのだから、もう少し良い雰囲気になってもおかしくないはずなのに?
「そういえばお腹空かない?」
『言われてみれば…、ちょっとだけ』
ぼんやりと呟くと、太宰さんは神妙に頷きながら返事をした。
「良いところ知ってるけど、どう?」
ヨコハマの潮の気配を孕んだ海風が、私と太宰さんの髪を揺らしていく。
迷う暇なんて、ない。
『是非!』
本当に何だかこれ、デートみたいじゃない?