第3章 猫目が笑う《乱歩》
大人げない?上等だ。
情けない?受けて立つわよ。
ハイヒールの踵をかつかつと鳴らしながら、私は頬を膨らませた。
駄菓子屋に着いてから、早30分。
延々悩み続ける背中には、苛立ちしか沸いてこない。
こんなに時間があったら明日の分も片付けられたじゃない!
思った以上どころか、全くの想定外の長さになっている休憩に、私は顔をしかめた。
「どーれーにーしーよーうーかーなっ」
何を悩んでいるのかと覗いてみれば、小さなヨーグルトのような駄菓子の色を選んでいるようだ。
私も子どもの頃に食べた記憶がある。
「これ、食べたことある?」
『は、はい』
ふと振り返られて、私は思わず口ごもってしまった。
美味しいよねー。
独り言なのか私への返事なのか、分からないまま小さなカゴを片手に、乱歩さんは会計をし始めた。
嗚呼此れで、やっと帰れる。