• テキストサイズ

《文スト》こんぺいとう

第3章 猫目が笑う《乱歩》




「良い天気だね」


『そ、そうですね』



すたすたと歩きながら、乱歩さんはまた瞳を猫のようにして笑っていた。



不思議な人だ。



外に出るのが本当に嬉しいらしい、子どもよろしくはしゃぎ回るその姿に私はため息をついた。



駄菓子を買いにいくらしいけど、今時わざわざ足で買いに行かずとも、通販だって沢山あるのに。



今日はまだ暑い。



晴れ渡った青空が嫌みのように見えて、本日二度目のため息をつこうとしたときだ。



「あれは!」

『い、いきなり何ですか!』



跳び跳ねる勢いで驚いた乱歩さんが、あれ、あれ、と前方を指差す。



いや、あれって。



『ビニール袋です、乱歩さん』


「知ってるよ!でもほら、風に揺れて猫に見えるじゃないか!」



猫っていうか、あの動き方は犬じゃ…。



呆れながらそう返そうとすると、ふわり、待ったビニール袋は車道の上を遊ぶように舞い始めた。




其れはさながら鼠を追う猫のようにして。



「ほら、矢っ張り猫じゃないか」



この人、私の心が読めるの?
顔を背けて歩きながら、私は一人、呟いた。


『…犬だし』

/ 29ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp