第3章 猫目が笑う《乱歩》
「暇?」
椅子をくるくると回しながら問う乱歩さん。
私が自分を指差すと、乱歩さんの目がまるで三日月のようになる。
「そ、君だよ」
『今丁度休憩を取ろうかと思ってました』
片付け終えた書類を一睨みして、乱歩さんには笑顔を向ける。
本当に手こずった。
途中よっぽど投げ出したかったけど、ただひたすらにペンを動かしていたら、いつの間にか終わっていた。
異能さえないけど、こうしたことで役立てるなら本望だ。
「それなら良いや!ほら、行こう!」
?
私が考え事をしていた間に、何か言っていたのだろうか。
『いや、乱歩さん。何処にですか』
「言わなくても分かるでしょ?僕の行きつけさ!」
は、はあ?
ワケも分からず唇の隙間から声を漏らすと、待ちくたびれたと言いたげに手首を引かれた。
「出発!」
「気を付けてね~」
一部始終を見ながらも、へらへらと手を振る太宰さんにぎこちなく苦笑をした後、私の体は容赦なく社から出ていた。