第2章 ヨコハマデート日和《太宰》
『…"菓子折り"は乱歩さんおすすめの駄菓子の詰め合わせですか?』
「ご名答」
未だに早い心拍数を刻む心臓を押さえながら、私は太宰さんにつられて笑った。
「ねぇ君、まだ隠してることがあるでしょ?」
『……はい?』
悪戯そうに此方の瞳を覗き込んでくる太宰さん。
何てことだ。
私は慌てて弁解する。
『いや、そりゃ人には隠し事が一つはありますよ!』
「うん」
『うんって!だから、その、太宰さんには教えられません!』
「そう?つまらないなあ」
ゆっくりと歩き出しながら、太宰さんはふと立ち止まったままの私を振り返った。
「…私は何時までも、待ち続けるけどね」
ズルいなぁ。
立ち並ぶビルには点々と電気が点り始めていた。
大観覧車のゴンドラたちも、煌々と光を放っている。
綺麗な夜景がこんなに似合うズルい人を、私は知らない。
『嗚呼、もう!』