第2章 調査兵団への勧誘
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「エレンッ…!!!」
鋭い目付きに変化したななが唇を噛み締めて俺を確かめるように立体機動に移ろうとしている。
そうだ。こいつが5年前壁を壊した、俺達をめちゃくちゃにしやがった、超大型巨人だ。
「あぁ…あの時の超大型巨人だ。行くぞ!!」
刃を手に取ろうとしたその時、激しい揺れが俺たちを襲った。
壁が壊されたかのような破壊音…嫌な記憶が頭によぎる。
「くっ!!」
壁の裏へ数名が吹き飛ばされた。
すぐさま立体機動を使い、壁にくっ付く。
上からガラガラと壁の欠片が落ちて来た。
「うっ、クソッ!」
ななが居ない…?
両腕で顔を守るように塞ぎ、左右を見渡すとコニーやサシャが同じように壁に沿い、体制を崩している光景しか見えない。
「おいっ!あいつ1人で壁の上にいるのか?!」
急いで体制を整え、近くの建物に乗り移り、もう一度壁の上へ向かう。
まさかだとは思っていたが、ななは超大型巨人に1人で挑んでいた。
ななは強い、が超大型巨人が壁を壊せるのは知性があるからだ。
ただの巨人とも戦ってない俺達にはまだまだ計り知れない戦いなのだ。
何があってもおかしくない、そうなる前に俺が絶対守る。
続けて加勢しようとする。
が、一瞬にして超大型巨人が目の前から消えた。
前方で空に舞うななが刃を振りかざそうとしていたが、消えた巨人に焦ってアンカーを発射出来ず、下に落ちそうになる。
「ひゃっ!」
壁に立体機動のアンカーを刺して、落ちそうになるななの腰を引き支え壁沿いに引き戻す。
「エレン…消えた…仕留めたと思ったら消えた…」
ビックリした放心状態のななの腰は思っていたよりも細く、甘い良い香りが鼻にこびり付いてくる。
初めてこれ程にまで身を寄せたからなのか、欲が出てくる。が、それ所じゃないとそれを抑え、周囲に消えた巨人が居ないか下を見渡しながら口を開いた。
「ああ。俺も見たよ。」
「もっ、もう少しだったのにッ…」
悔しそうに泣くななの頭を撫で、頬まで垂れた涙を優しく親指で拭う。
「よくやったな。」
「…っうぅ…」
愛しくなった俺は、ギュッと抱きしめそうになった手を止め、壁の上に引き上げた。