第5章 新しい生活
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俺はずっと前から、ななが好きだった。
まだトロスト区の壁が破られる前の話だ。
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「ねぇねぇ、エレンは好きな子女の子居るの?」
「はぁ?何だよ急に。」
「だって周りの子、みーんな好きな男の子居るって!」
「知らねぇよ、そんなどうでもいい事。」
「もう!またそんな事言う!ちなみに私が好きなのはエレンだよ?」
「…ッ!はぁ?!」
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薄暗く肌寒い地下室のベッドの上で思い出す。
あの時のあいつの顔が忘れられなくて、俺は今に至っている。
ガキの時の恋愛なんかただのママゴトぐらいにしかならない事は分かっている。
でも、それからの俺は狂ったようにななの事を溺愛した。
今まであいつに好意の目を向けて近付いて来た奴ら全員、俺の手で片っ端から追い払った。
子供がやるとは思えない程の事も散々してきた。
鈍感なあいつは気付いちゃいねえだろうけどな。
アルミンは除外している。
長年見て来てななはアルミンの事を完全に“友達”だと認識している事が分かったからだ。
まぁ、俺もだろうけど。
とにかく、あいつに好意を持った奴は散々見てきた。
だから何となく分かる。
兵長が、他の奴らとは違う扱いをななにしている事を。
まぁ俺らよりかなり年上だし恋人同士になる確率は低いかもしれねえけど、油断は出来ねえよな。
俺は人類最強に憧れている反面、勝手に恋敵にもしていた。
「はぁ……あいつ大丈夫かよ…。」
そうポツリと呟く。
すると、階段を降りる音が地下室に響き渡った。
段々と近付いてくるその音にハッとした俺は、ベッドから飛び降り階段の方へと向かう。
「ななか!?」
熱が下がり、地下室に戻ってきたのかもしれないと思った俺は嬉しく思い、階段を見上げた。
が、そこにはタオルを持った兵長が降りてきていた。
「何だ、その面は。クソでも漏らしたのか?」
「あ……い、いや…。」
漏らす訳無いでしょ!
と突っ込みたい所だがグッと堪える。
「おい、あいつと幼馴染みってのは本当か。」