第5章 新しい生活
「でも、ここにはベッドが一つしか無いですよ?」
分かり切っているが言ってみる。
頭が回らない。
「そうですよ兵長!!兵長の寝る場所が無くなっちゃうじゃないですか!!」
「ギャーギャー喚くんじゃねぇ。俺はこいつの面倒を見る。見た通り此処は部屋は多いが、寝る場所がねぇ。お前の部屋で看病するにしろ一緒だ。」
もう話す気力も無くなってきた私は、ベッドにバタンと倒れる。
兵長の部屋で兵長のベッドを借りて寝てしまうのは忍びないが、ここから動く事は出来なさそうだ。
全身の骨がキシキシと痛み、何度も体制を変える。
息も荒くなってきた。
「はぁ…はぁっ……。」
兵長が落ちた布団を取り、掛けてくれているようだ。
そっと私のおでこを冷たい手で覆う。
「チッ、また上がっていやがる。おい、エレン、心配するな。俺は病人に手を出す程困っちゃいねぇ。これは命令だ、お前は早く地下室へ行け。」
「…ッ…!……分かりました……。」
そこで私は意識を失う様に眠りについた。
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「ん……。」
「目が覚めたか。」
重い瞼を開け声のした方に目を向けると、兵長が足と腕を組んで椅子に座っている様子が目に入る。
「………。」
体が軽い。
違和感を覚え起き上がり見てみると、兵服で寝ていた筈の私の衣装がラフなシャツとショートパンツに変わっている。
「…え?」
「何だ、寝惚けてんのか。」
「あ…おはようございます…。その、私、どんな格好で寝ましたっけ…?」
兵長が着替えさせたとか…。
そんな訳無いよね。
「あぁ、俺が着替えさせた。」
はい?!
「ま、まさかぁ!兵長も冗談キツイですよ?」
「冗談じゃねぇ。ペトラに頼もうと部屋に行ったが、先に寝ていやがった。」
嘘でしょ……。
「あ、あの…その…見たんですか……?」
「見てねぇと言えば嘘になるな。」
この心境は何とも言い表しにくい。
恥ずかしいのはもちろんだが、
兵長に私なんかの裸を見せてしまったかと思うと虚しくも申し訳ない。
「……兵長が見た物は忘れて下さい。」