第5章 新しい生活
「それよりだと?」
明らかに声が低くなっている兵長に焦りを覚え、急いで話を投げ掛ける。
「り、リヴァイ兵長!ペトラさんから聞いたんですが、今日は歓迎会をして下さるんですよねっ?」
兵長が歓迎会など明るい行事を好むとも思えないが、一応それなりに楽しい会話だ。
「……そんな状態で歓迎会もクソもねぇだろ。」
今日丸一日掃除をするとは思っていなかったが、
やっと明日からリヴァイ班の厳しい訓練が始まる。
早く治して参加しなければ直ぐに体がなまってしまうし、皆とも差が出てきてしまうだろう。
訓練は明日から参加出来ると思うけど、今日の歓迎会には参加したかったな…。
自分が投げ掛けた会話にガクッと肩を落とす。
「そ、そうですよね…。」
「…そんなもん明日にでも出来るだろ。てめぇは早く寝て一日でも早くそれを治せ。」
「え?……分かりました!ありがとうございます!」
私のせいで今日予定の歓迎会が無くなったのは皆に申し訳ないが、当たり前の様に日をズラしてくれる兵長の優しさに嬉しさが込み上げてくる。
「それでは早速寝て治しますね!おやすみなさい!」
「はぁ?!お前自分で何言ってるのか分かってんのか?!」
エレンの大きな声でビックリした私は、被ろうした布団を床に落とした。
正直言って、起き上がる度に頭が鉛のように重い。
「な、何?いきなりどうしたの?」
「ここ兵長の部屋だぞ?!」
え?何言ってるの?
「エレン、ここは医務室だよ?」
ベッドは一つだが他の部屋より僅かに広いし、何より救急箱の様な物もある。
「エレンの言った通りここは俺の部屋だ。」
「……え?そうなんですか?す、すみません…せっかく綺麗にしたシーツを汚してしまって…。」
「そう言う問題じゃねぇだろっ!お前の部屋は地下室だろ?早く来いよ、看病してやるから!」
「駄目だ。てめぇに熱でも移ってみろ。何が起きるか分からねぇ。」
「じゃ、じゃあペトラさんの部屋にっ!」
「それも駄目だ。他に熱が移ってしまうと班の士気が下がる。こいつは熱が下がるまでここで隔離する。」