第5章 新しい生活
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持ち上げられてしまい恥ずかしくなった私は両手で顔を覆う。
「うぅ…失態ばかりですみません…。」
熱が上がってきているせいか、しんどさで涙が込み上げてきた。
目を擦っていると真上に居る兵長と目が合う。
「…全くだ。」
目を逸らしながら軽く溜息を吐かれ、更に落ち込む。
「……今日私変なんです…。」
「あ?」
オルオさんは突き飛ばしてしまうし、エレンにはそっぽを向かれたり怒られたりもした。
私は何も分かっていないんだと。
今日の私の行動で皆の態度がおかしかったと思った私は、熱のせいもあってか気付けば兵長に弱音を吐いてしまっていた。
「……あぁそうだな。エレンと同部屋なんかむしろ襲ってくれと言ってるみてぇなもんだ。」
ベッドは一つしかないが恐らく医務室だろうと思われる部屋に入り、フワリとベッドに寝かせられる。
「…え?それは絶対無いと思うんですけど…でもエレン何故か怒ってました…。何がいけなかったんでしょうかね…。」
「俺が知る訳ねぇだろ。いいから早く寝ろ。」
兵長の冷めきった目が私を見下ろす。
「あっ…すみませんっ!」
急いで布団を被り、顔半分を隠す。
ベッドに横たわったからなのか全身の力が抜け、口を動かすのもしんどくなってきた。
瞼が急激に重たくなる。
「…いつも、その…助けて頂いて…ありがとうございます…。」
幸いまだベッドの近くに居た兵長の袖をそっと抑え、ずっと言いたかった言葉を口に出す。
気を失いそうになった私を支えてくれた兵長。
襲われそうになった私を助けてくれた兵長。
あの時に兵長が助けに来てくれなかったら私はどうなっていたんだろうか。
考えただけでも身震いがする。
そして今日もまた、迷惑を掛けてしまった。
助けてくれた頻度が多過ぎたのか、
兵長の容姿がこんなにも魅力的過ぎだからなのか、
理由は分からないが自分の中で大きな存在になっていたのは確かだった。
「………。」
兵長がそっとベッドに腰掛けてくる。
「あれ…?戻らないんですか…?」
兵長は唸りながら目を瞑りかけていた私の前髪をサラリと掻き分け、おでこに軽い口付けを落とした。