第5章 新しい生活
ーーーーーーーーーーーーー
かなりの至近距離で覗き込んで来たななが可愛過ぎてヤバくなった俺は、これ以上自分が変な気を起こさない様に素っ気なく振る舞う。
「最近エレン変だよ?…まさか…反抗期?!」
……反抗期の方がどれだけマシか。
いつもだったら一緒に居るだけで飛び上がる程嬉しいが、今は状況と心境が全く違う。
同じ屋根の下なんてもんじゃねぇ。
同じ部屋で生活するんだ。
そう言えばこいつ
何で地下室を自部屋にするなんて言い出したんだ…?
「はぁ…?んな訳ねぇだろ…。」
疑問と裏腹に
先の展開に期待している自分が居るのは分かっていた。
触れてしまうと自分が止められなくなる。
そうなればななは他の部屋に移動する事になる。
こっ酷く嫌われて、今までの苦労も我慢も全部水の泡になるだろう。
そんな事にならない様にする為には、少しの距離を置く事が最善だと思った。
「はいはい、じゃあもう近付きませんよーっと。」
…は?
ななの冗談交じりの言葉で
一気に不安と怒りが湧き出す。
先程までの思考がプツンと途絶えた俺は、いつの間にかななの両手首をキツく掴んでいた。
「え?!」
「そう言う事じゃねえっ!やっぱり何も分かってねえんだな…。」
分かるはずがない。分からないように、自分の気持ちに悟られない様に今まで努めてきた。
“友達”でも良かったから。
だから…
このタイミングでお前が俺から離れるのはおかしいだろっ…。
「な、何なのエレン?怖い顔してるよ?」
怖い筈が無い。
怖がる原因の俺の欲を一つも出し切ってねえのに。
もういいや…。
今までの仕返しだ。
もう幼い頃の俺じゃねえって事、分からせてやるよ。
壁を利用して手首を抑えながら顔をこちらに向かせる。
逃げ惑う好きな女に無理矢理キスしようとした、その時だった。