第2章 調査兵団への勧誘
エレンとアルミンの居る方向へ目指す。
近付いて行くにつれ、次第に私の鼓動が早くなる。
そこには自分が予測していた以上の残骸が転がっていた。
覚悟はしていたが、これ程までとは…。
現実はこうも、残酷だった。
その時、人間の悲鳴が聞こえた。
「ギャーー!!助けてっ誰か助けてええッ!!!」
10m級の巨人に掴まれた男兵士が子供の様に泣きじゃくり、巨人の手をボコボコと殴る。
巨人が喜ぶかのようにヨダレを垂らしながら汚い口を開け、その兵士を喰おうとしている瞬間が見えた。
私はスピードを上げ、近くの建物にアンカーを打ち込むと、勢い良く回転をしながらうなじに斬り掛かる。
「ガアァ…」
掴んでいた巨人の手が緩み、兵士が地面に落下しそうになる。
「うっ…重…。」
地面に叩き付けられる前にキャッチし、立体機動を使い建物の上で男を降ろす。正直、重い。
が、私の身体は男1人を持ち上げられるくらい鍛え込まれていたようだ。
間一髪だったのをホッとしていたのも束の間だった。
「遅っせぇんだよクソ女ッ!!もうちょっとで喰われる所だったじゃねぇかッ!!うぅ…」
恨む様に私の胸ぐらを掴み揺さぶると、すぐにヘナヘナっと座り込み、また泣き出す。
見返りを求めていた訳では無いがこの情けない光景に怒りを覚える。
狂っている。この世界がこれ程までにも人を変えているのか。
生きる事を諦めるかの様に座り込む兵士。兵士が生きる事を諦めれば、か弱き住民達はどうなると言うのか。
怒りはその言葉では無く、この残酷な世界に、そして兵士の在り方に沸沸と嫌味が湧いて出てきた。
「大人しくそこで座っていてもまた掴まれて終わるよ。誰かが死に物狂いで戦わない限り、この地獄は終わらない。」
「うあぁぁあッ…!!」
泣いて何かが変わる訳じゃないのに。
私はその場を離れ、近くの巨人を倒す。
先程の怒りで息が上がり、無駄な動きが多くなる。そもそも怒りなのだろうか。
ガスがもうすぐで尽きそうだ。
近くに助けてくれる人は居ない。エレンとアルミンもここには居ない。もはや前衛部隊は既に壊滅したのかもしれない。
それでも私は突き進むしか無い。
刃が使い物にならなくても
ガスが尽き果てても。
意識が遠のき始めていた、その時だった。
「おい…大丈夫か。」