第3章 子守唄
鶴丸「気づいてたのか…」
「えぇ、大方、前の主と重ねていたんでしょう?」
鶴丸「そこまでバレてるとは…」
驚いたな、と苦笑したあと、白くて綺麗な顔に、暗い影を落とす。
「私は前の主さんのことはよく知らないけど…私はあなたのことを知りたいと思っているわ」
鶴丸「それは、興味か?」
「それもある。でも何より、″私″を見てほしいから」
先ほどまで震えていた手はもう止まり、今度はユキが握り返す。
凛とした声が、表情が、なによりその瞳が、鶴丸には先代と重なる。
鶴丸「あ…主…」
「…私は…神無。今の、貴方の主」
目をそらすことなく、目の前の神を見つめる。
握った手を離し、呆然としている神の頬に添える。
はっと、鶴丸は我に返る。
鶴丸「…簡単に、真名を言っていいのか?」
「簡単じゃないわ。あなたにだけよ」
鶴丸「いつになく饒舌じゃないか。明日は雨でも降るのか?」
「本当、失礼ね?私は元々よく喋るわ。それに表情がついていかないだけよ」