第3章 子守唄
雪華「私は…あなたがずっと…私に囚われているのは、見たくない」
鶴丸「囚われている…?」
雪華「えぇ。あなたには、他の愛を知って欲しい。たくさんたくさん、これから幸せになってほしいの。あなたが私に、そうしてくれたように」
鶴丸「…俺の…幸せ…」
雪華「…もう、気づいてるはずよ。今のあなたの幸せがなんなのか。今の幸せを、過去の幸せのせいで潰して欲しくない」
鶴丸「…俺は…君が手に入れられなかった、今の幸せを手にしてもいいのか…?」
鶴丸の頬を、ふわりと優しい風が撫でる。
雪華「当たり前よ。あの子のこと、好きなんでしょう?」
鶴丸「…あぁ…そうだ…俺はあの子が…好きだ」
雪華「なら、今は精一杯、あの子だけを見て。あの子が、あなたの愛に気づくまで」
鶴丸「…まさか…かつて愛した君から、言われるとはな」
雪華「ふふ、アドバイス出来るのはこれで最後だから、言っておかないとと思って」
鶴丸「…そうかい」
雪華の声はだんだんと遠くなっていく。
雪華「…折れないでね、鶴丸」
鶴丸「折れんさ。俺は…主がいる限りな」
いつもの無邪気な笑みを浮かべる。
吹っ切れたように、笑う。