第3章 子守唄
夕方になり、ようやく仕事が一区切りついたところで、ユキは腕を伸ばす。
「んん…もう、夕方…」
窓の外は夕焼けに紅く染まり、秋の風が髪を揺らす。
少しだけ、過去を思い出す。
チリン…と、ユキの頭の中で鈴の音が鳴る。
目を閉じると、不意に後ろから声がした。
鶴丸「わっ!」
「ひゃっ…!」
ビクッ!と肩を震わせ、それと同時に振り向くと、いたずらっ子よような顔をした鶴丸がいた。
「つ…る、ま…る…」
鶴丸「おっと、そんなに驚いたか?いつも無反応な君のことだから、今回もそうかと思ったが…」
意外だ、と思いながら自分の主を見ると、彼女はほんの少しだけ手が震え、顔色が悪い。
そんな姿に申し訳なさと、美しさを感じた。
鶴丸「…すまん。怖がらせるつもりじゃなかったんだが…」
「…怖い…?」
ユキは自分の手を胸の前で握りしめ、困惑する。
まるで、自分の感情が分からないというように。
鶴丸「あぁ、そんなにふるえているし、顔色も悪い。人がそんな反応をるときは怖いからだと、前の主は言っていたが…違うのかい?」
「…怖い…そう、かもね…」