第2章 新たな主
帰城した鶴丸の元に、ユキがやって来る。
「おかえりなさい、鶴丸」
抑揚のない声の主とは正反対に、鶴丸は嬉しそうに答える。
鶴丸「見てくれ主!光坊だ!」
「…まず帰ってきたら、ただいま、を言いなさい」
ムニッと軽く、頬をつねる。
想像していたよりも柔らかいそれを、ユキは何度かつねってみる。
鶴丸「わかった、わかったから。離してくれ」
「…ただいま、は?」
鶴丸「ただいま、主」
「…よろしい」
ユキは手を離し、隻眼の男に目を向ける。
「それで、あなたは?」
光忠「僕は、燭台切光忠。青銅の燭台だって切れるんだよ。…うーん…やっぱり格好つかないかな」
苦笑した光忠を見て、ユキは首をかしげる。
「どうして?」
光忠「え?」
「どうして格好つかないの?青銅が切れるなんて、すごいじゃない」
光忠「そ、そうかな?」
光忠は少しだけ頬を赤くして、微笑んだ。
照れくさそうな微笑みは、今までユキが見たことのない表情だった。