第2章 死に損ないの希望
泣きすぎた私を見かねたサボは、その後部屋を出て、コップ一杯の水と濡れタオルを持って来てくれた。
「痛々しいな…」
「久しぶりにこんなに泣いたから明日はすごい腫れると思う」
「そっちじゃねぇ」
てっきり充血した目と、擦って赤くなった目元のことを心配されてるのかと思ったが違うらしい。サボはそっとガーゼの上から私の頬を撫でる。火傷に障らないよう、丁寧に触れる手が、なんだかくすぐったかった。
「跡、残るんだろ」
「別に今更顔に傷の1つや2つ増えたくらいで感傷的になんないよ」
「顔もそうだが顔だけじゃねぇだろ。腕だって…まだ嫁入り前なのに」
「なにそれっ、嫁入りって…別に結婚しなくても生きていけるわよ」
思わず可笑しくて笑ってしまったが火傷で顔を引きつってうまく笑えた気がしない。そしてサボの表情も曇ったまま。
「…私ね、自分の顔あんまり好きじゃなかったの。じいちゃんは……爺馬鹿だからさておき、周りの海兵から言い寄られることもあったから多分見てくれは悪くなかったと思う」
「あんたは綺麗だよ」
「ふふっよく恥ずかしげもなくそんなこと言えるわね。私の顔、エースと全然似てないでしょ?目つきも全然違うし雀斑だってない。髪だって色も違えば髪質も違う。」
「そ、んなこと…」
「あるよ。全然似てないなってちゃんとわかってる。でも今は顔に火傷跡できちゃったから、可愛い弟とお揃い」
「は?」
「だから!サボとお揃い!でしょ」
エースと似ていない自分の顔に価値が見出せなかった。じいちゃんは母さんと瓜二つ、なんて言ってたけどやっぱり姉弟なんだから似てる要素は欲しかったとずっと思ってた。でも今は、サボとお揃いだ。前よりは自分の顔が好きになれそうだと思った。