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【ONE PIECE】冬来りなば春遠からじ

第2章 死に損ないの希望


目頭が熱くなってサボの顔がぼやけてくる。顔も引きってきて自分でも表情が歪んでいるのがわかる。火傷が痛むし、顔半分を覆う様な大きなガーゼが酷く邪魔だ。

「サ、ボ……サボ、」
「なんだ?」
「私、エースにお姉ちゃんらしいことなにもできながった、こんなっ、こんなことになるんだったら、もっど一緒にいてあげればよがっだっ!!」
「うん」
「あのとき、どうすればよがっだのかなぁ…!?」
「そんなの、わかんねぇよ…」

赤髪が来て、戦争は終結した。その後私はじいちゃんとエースの側に向かった。海軍側には私とエースとの関係は、どちらも保護者をじいちゃんとするため、一応弟分として通してあった。横たわった体に大きな風穴を開けた"火拳の"エースの体はとても冷たかった。だけど顔は見たことが無いほど穏やかだった。なにを思って己の最期に笑みを浮かべられるだろうか。悔いはなかったというのか、エースは。人生を全うできたというのだろうか。

「俺はあんたほど不器用に弟を愛し続けた姉なんか知らねえし見たことない。エースにも伝わってるよ。…何度でも言うよ、姉ちゃん、生きててくれてありがとう」
「…う"っ、うぅ、」

サボは私の失わなかった手を握ったまま傷に触らない様に優しく抱きしめてくれた。久しぶりに人の暖かさに触れた気がする。誰かに縋ったのも随分久しぶり…いや、幼い頃以来だ。
重かった。中将という地位も、部下の命も、救いたいと思った一般人も、海軍の正義も、血筋も、エースの人生も。肺に、真新しい空気が入って来た気がした。タバコなんて吸ったことないけれど、真っ黒に染まった私の身体に透き通った綺麗な空気が入り込んで、悪いもの全部追い払ってくれたような。
エースの事、生き急ぐなって何度も思ってたけど、生き急いでいたのは私も同じだったようだ。そんな簡単に、最終目標だった元帥になれるわけなかったし、エースもルフィも勿論サボも海賊になるのを止められないだろうなってわかってたのに。

「サボ……」
「ん?」
「貴方も、生きててくれてありがとう」
「……………おう」

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