第6章 部下の欽仰と返忠
甲板に集められた海兵たちの目は前に立つ女に向けられている。まだ20になったばかりの若い女の階級は准将。異例のスピード出世である。彼女を知らない海兵たちの間ではアバズレ女など非常に不名誉な噂が立っているが、勿論嘘である。
天才的な戦闘センス、持って生まれたカリスマ性、冷静な判断力、洞察力が功を成し、は海軍に入って10年、あっという間に准将にまで昇格した。
「物資の供給をする次の島の一つ前で海賊が暴れているらしい。直ちに上陸する。あの20分程で港に着く、一同準備を」
「イエス、マム!!」
ニコリとも笑うことなく淡々と命令を出したに海兵たちは敬礼で答える。
島に上陸して数分、島の惨状を目の当たりにしてエルマーは言葉を失った。似ているのだ、彼の故郷の惨状に。エルマーは頭に血がのぼるのがわかった。
「アダンとクリミアは私とともに先行しろ。その他は人命救助を。安心しろ、こんな惨状を生み出すのは三流海賊だ」
「俺も行きます!!!」
声を上げたエルマーにの視線が鋭くなる。小さく「アホ」「バカ」と呟いたアダンとクリミアの声は誰にも拾われない。
「私の命令が聞こえなかった?その他は人命救助。あんたは来なくていい」
「俺も戦います!海賊を、」
「海賊を殺しに?」
怒気の込められた声にエルマー含め、海兵たちがびくり、と肩を揺らす。キレたのすぐそばにいるアダンとクリミアは目をそらす。2人の「クソエルマー!」という心の声が重なった。
「お前に説教垂らす時間も惜しい。総員取りかかれ。行くぞ」
「イエス、マム」
珍しく怒鳴ることをしなかったにエルマーを除く部下たちは眼を見張る。が、すぐさま怪我人の救出、救助に取り掛かる。
先行した3人は反対の港に停泊している海賊船を見つけるとすぐ様乗り込み見張りの海賊を捉えると船を沈めた。
近くの島の駐在海兵たちが海賊と応戦しているらしく、3人はその場へと急ぐ。