第5章 実弟の追憶
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自分の体が何も感じなくなっていくのがわかる。ルフィの暖かい体温も感じられなくなってきた。
なぁルフィ、お前の夢の果てが見られないのが残念だが…それでも俺はもう、思い残すことはない。いや、一つ心残りがあるかもしれない。あの女と、もう一度話したい。あの人の真意が知りたい。もう、叶わないか。心の中で自嘲する。
そう思ったとき、目についた女海兵。見覚えがある、深い青色のスーツ、誇り高い白い正義のコート、いつもは艶やかな金髪も今は少しパサついている気がする。遠すぎて髪質までわかんねえ、と小さく笑う。それから、見たことある表情だ。
あの時と同じ、酷い顔。恐怖と絶望に染まった表情。
嗚呼、やっぱり俺は愛されているらしい。あんたともっと話したかった、あんたともっと、一緒に過ごしたかった。
「愛してくれて………ありがとう!!!」
姉ちゃん、ごめん。俺は嬉しくて仕方がない。でも欲を言えば、『おやすみ、エース。大好きだよ』って…そう言って笑ってくれたら、よく眠れそうだ。