第4章 上司の回顧と再会
が火拳のエースと幼馴染なのはガープさんから聞いている。彼女が10歳までは同じところで暮らしていたとも。弟分として可愛がっていたと聞いていた。
確かに弟分を亡くしたことはショックかもしれない。しかも海賊王の実の息子で、当初は公開処刑の予定であったのだから。最期はサカズキに体を貫かれて死んだが。
「あー、まぁ弟分が死んだのは確かにショックだろうが…」
「弟分じゃありません。弟なんです」
「……ん?」
「血の繋がった、弟なんです」
「笑えない冗談はよせ」
思わず見聞色の覇気で部屋の周りを伺ってしまった。この会話を聞いているような人間は周りにいない。
火拳のエースが実の弟?そんな、まさか。まて、事実だとすると彼女は海賊王の実の娘にあたる。こんな危険因子が海軍に?なぜ海軍なんかに。しかし、は眩しいくらい正しい海兵だと言い切れる。命を重んじ、命に優劣をつけず、誰をも平等に扱おうとする様子は他の連中から見れば変人と取れるだろうが。
「エースのために海兵になったんです。でももういない」
「辞めてどうする。海賊にでもなるのか?」
「なりません。私は…人を助けたかった、エースを救いたかった…」
「じゃあ海兵やめて死ぬのか?」
「……」
は俺の質問に答えない。無言は肯定だ。こいつならやりかねない、そう思ってしまった。
が中将まで上り詰めたとき不思議に思ったことがある。何故そこまで生き急ぐのかと。確かに彼女は人を助けたいから、その一心で動いているようにも見えたが違う。打算的なものも俺は感じていた。どうすれば出世できるのか、そういう欲はこいつも持っているのかと感心したくらいだ。
「…なんでお前、海兵になったんだ」
部屋のソファに座らせ俺も向かいに座る。こいつの戦力、人格、能力全てにおいて失うには惜しい。勿論可愛い部下としてやめて欲しくない気持ちもある。