第3章 弟の懺悔と初恋
今日も派手にやられた。背中は痛くて起き上がれない。辛うじて動く首を動かして自分の体の状態を見る。毎回のことだが体には治療を施した後が。
エースは何も言わないが、治療はがしてくれている、多分。丁寧にガーゼは貼ってあるし、湿布もシワが寄ることなく貼ってある。包帯だってほつれないようしっかり巻いてある。
鍛錬中は鬼ではあるが、ここまで丁寧に治療までされると、本当にがなんなのかわからなくなる。確かに怖いし鬼だし苦手だが、嫌いにはなれなかった。
「あんたも、毎度毎度良くやるね」
タダンの声だ。声の方へ首を向けるとエースの側に座る。その目の前にダダンはどかり、と胡座をかく。
「私に勝てなきゃ、海になんて出てもすぐ死ぬ」
ぐっ、と息がつまる。は、いつものようにサボたちを煽るつもりで言っているのではない。真実を淡々と述べているだけだった。
「それにしたってエースに対しては特段に当たりが強いじゃないか」
「えっ、嘘。強いかな?」
「はぁ~~??自覚なしかい!?数年前の自分を忘れたか!?」
「ちょ、うるさいよダダン。三人が起きる」
人差し指を立て、それを口元に持っていき、ダダンに静かに、とジェスチャーする。
うっそだろ…、自覚なかったのかよ。あんなにエースのこと煽りに煽っておいて、全部無自覚だって言うのかよ。ダダンも声がでかすぎるし、ていうかもうオレ起きてるし。
半ば呆れながらもサボは2人の会話に聞き耳をたてる。
「もうね、エースに優しい自分とは決別したの。優しくしたって、エースは海に出る。だったら嫌われたっていい、それでエースの生存率が上がるならそれでいい」
「あんた…」
「エースは私が守る。姉ちゃんだからね。あ、勿論サボとルフィも」
三人とも、私の可愛い弟だから。そう言ってダダンに見せた下手くそな笑顔。横顔であったが、この笑顔がオレには忘れられないものとなった。
さらり、とエースの前髪を掻き上げ、優しく額に触れる。同じ手で殴られ、掴まれ、投げ飛ばされていたなんて考えられなかった。
オレはこの瞬間からに恋をしていたんだ。本当は優しい、不器用な彼女に。