第1章 選抜試験
雄司は再び溜息をついた。よりにもよって自分が最初。まるで見せしめのようだ。できるだけ最後の方が、相手の戦い方を理解できて読みやすくなるっていうのに。一番不利ではないか。
というか、全くもって戦える自信はない。政宗と戦わせてもらえること自体は嬉しいが、それは腕に自信があるという事には直結しないからだ。
雄司はだるそうに前に出る。小十郎はにやにやしながら木刀を差し出す。が、雄司は拒否した。
「一回りほど小振りなものを…童のものでかまいませぬ、二振り用意してもらいたいのだが」
雄司は小振りな二振りの刀を扱う。何故かというと、農村の祭で刀の舞を踊った事があるから―――というのもあるが、恥ずかしい話、稲刈りの面倒さに試しに両手に鎌を持って振ってみたところ、意外と早く作業が終わったことからきている。
は? と小十郎は眉をひそめ、しょうがなさそうに別の木刀を二振り持ってこさせる。
「本当に童の練習用だが…これでいいのか?」
「ええ。かたじけない」
「…なめてやがんのか?」
「まさか! …どう考えても、すぐ負けますよ」
木刀を受け取り、軽く振ってみる。少々軽めだが、まぁ大丈夫だろう。
「ちなみに政宗様」
「あんだ?」
「六爪…というのは、勿論無しでしょうね?」
政宗はフッと笑った。
「それは、お前の実力次第じゃねぇか? 抜かせて見せろよ」
「冗談でしょう、俺達ごときに」
もちろん冗談だろう。まだ正規の兵にもなっていない者にそんな実力があろうとは、政宗も考えていないに違いない。
夢見るように、一抹の期待は寄せているのかもしれないが。
雄司はゆっくりと構える。政宗も小十郎から木刀を一振り受け取り、向き合った。
「お手柔らかに」
「さて、どうだかな!」
小十郎が、はじめ、と声高に言った。