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青一点【BSR】

第1章 選抜試験


 はじめ、とは言われたが、両者動かず睨みあったままだ。張り詰めた空気が、雄司にとって少し心地いい。
(はぁ、どうしたものかなぁ)
 雄司に武術の覚えはない。まだあまり鍛えている訳でもないし、強めに見積もっても、その辺の雑兵と同程度だろう。それでも傲慢か。
「…行きますよ」
「いつでも構わねぇぜ」
 政宗は余裕の表情で来いよとばかりに手招きをしている。
「――――――やあぁッ!!」
 ついに雄司は踏み出した。右の刀を振り下ろす。しかし渾身の一撃は政宗に軽くいなされ、肩を打たれてしまった。
「あっ………」
 思考が一瞬、止まる。
 ものの数秒で、終わった。
 これが本当の戦であったなら、あっけなく死んでいたのだろう。
 なんにしろ、もう自分は一本取られた。それも、切り込むことすらできずにだ。
 酷すぎる結果扱いにされ、帰されて当然だろう。
(これでもう不合格に…)
 雄司はそのまま膝をついた。
「負けま………「立てよ」
「は?」
「何回俺に斬られたって構わねぇ、そのまま戦ってみろ。俺は、お前らの動きが見てぇんだ」
 政宗は雄司に木刀を突き付け、口笛を吹いた。

「俺が満足するまで、付き合ってもらうぜ? 全員」

 一瞬で負けたことも癪だったが、雄司は試合が続くのもそれはそれで面倒だなと思ってしまった。
「ちなみに、斬り込むときにそんなに甲高ぇ声を出すのは愚策だな」
「あ、はあ」
 じゃあ、次だ。政宗は下がり、もう一度構えなおす。雄司は立ちあがった。
「何度も殺されるような羽目になるとは思いもしませなんだ。貴方の思う存分にお楽しみくださいませ。俺ごときで貴方の欲求が事足りるならばね」
「Ha、いい性格してんな、お前」
「褒めてませんよね?
 まぁそれは置いといて―――では、もう一本」
「ああ、来いよ」
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