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青一点【BSR】

第2章 初陣の日


 政宗は無言で半兵衛の背を睨みつけていた。
「…追わないのですか」
「背後から狙う? …そんな卑怯な真似をする理由、今はねえな」
 呆れたように、政宗は肩をすくめた。さっと血払いをし、刀をしゃりんと納める。
「お前、何て言ったか… 大丈夫か?」
「え? ええ、まぁ。傷一つありませぬが」
「木刀で真剣に挑むたぁ、アンタも無謀な事するな…」
「!!!」
 目の前の事に頭が一杯で完全に忘れていた。言われてみれば、自分の刀は銀貼りの木刀である。あのまま挑んでも、抵抗することすらできなかったのだ!
「…忘れていました」
「何回も助けられる訳じゃねェからな」
「は」
「で、名前は?」
「雄司と申します」
(さっき半兵衛に呼ばれていたはずなんだけど)
「Hum… じゃ、雄司。ちょっと手伝え」
 政宗は馬から降り、広場を顎で指し示した。

 彼らの懐を漁る手は真っ赤に染まっている。
「具合悪くなったらやめていいからな」
「いえ、…まだ、大丈夫です」
 雄司と政宗は、弔いとして敵兵の刀を兵の懐から抜き取り、広場に刺していた。
「あいつらは、自国の兵をなんとも思ってねぇみたいだからな。せめて、こっちが弔ってやらねぇと寝覚めが悪いだろ」
 というのが政宗の言い分である。
 時刻は昼餉時だろうか、日が高い。しかし空腹を感じる事は無かった。吐いて吐いて、胃はとうに空っぽだろうに。
「しかし、何故この場所が?」
「雪の上の足跡だ。一人だけ別に行ってたら怪しいだろ? 敵国の間者かと一瞬疑ったぜ」
「は、すみません。単独行動などとおこがましい事を…」
「いや、そのお陰でこいつらを見つけられたんだ、わざわざ俺が出た成果としては十分だ」
 ざく、と政宗が最後であろう一振りを地に突き立てた。
「これ、どうするんですか」
「ここは内陸だからな、死体は動物に食ってもらうしかねぇ。刀や金属は帰りに持っていって鍛え直すさ。…それがどうした?」
「ただの好奇心ですよ」
「Ah? …まぁいい」
 政宗は少し怪しんだが、考える事をやめたようだ。…今のところは。
「特別に後ろ乗せてやるよ、あいつらに合流するぜ」
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