第1章 選抜試験
小十郎はこちらを見据えて言った。
「今回の試験は全員、一回で選抜することにした」
雄司は動じなかった。
というより、まぁここは無鉄砲無計画暴れ馬な伊達軍だからと心中で罵倒していた。
「おい… 今何か嬉しくねェ事考えたな」
そんな些細なことも的確に察知してくるあたり、流石は右目というべきか。
「ええ、まぁ、伊達軍なのでね」
幾秒かの沈黙が下りる。小十郎は半ば呆れつつあるようだ。雄司は黙る事にする。
「礼儀正しいくせしてコイツ… ああ、松永みてぇに扱いづらいなお前…。
いや、それはいい。試験内容は、政宗様が直々にお伝えなさるからしっかり聞けよ」
「はい」
「しばらくしたら女中が迎えに来る。ついていけばまぁ、なんとかなるだろうさ。迷われても面倒見切れないから自己判断しろ」
そこも試験であるという事なのだろうか?雄司は首を傾げる。
「質問はほぼ受け付けねぇ。何度も言わせてくれるな、自分で考えろ。いいな」
何度も同じ話をしているせいか、小十郎は飽きたような、疲れたような顔をしている。
「説明はそれだけですか」
「ああ、もう来るまで時間がねぇぞ」
「他への説明は?」
「おめぇが最後だ」
そう言って、小十郎は無造作に襖を開ける。それを、ちょうど来たらしい女中が驚いた表情で見上げた。
「おっと… すまねぇな」
「いえ、お気になさらず。雄司様、こちらへ。ご案内いたします」
ふと気づいたように、小十郎が振り返った。
「ま、精々足掻いてくるんだな。その身体で何ができるのかは知らねぇが」
「小さな体と侮りなさいますな」
フッと笑い、小十郎は歩いて行った。