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青一点【BSR】

第2章 初陣の日


 雄司の初陣は、一揆の鎮圧であった。伊達成実を筆頭とし、帰省後すぐだったにも関わらず、愛馬出雲に乗り出陣する。まだ新入りの一兵だった雄司だが、この戦で何らかの名を上げたことで(理由は残されていない)、入軍一日目にして異例の昇級を果たす。果たして戦中何をしたのか、それは永遠の謎である。(「【白池雄司】の生涯」より抜粋)

 数刻もしない内に、出発の法螺が響いた。
 己も出雲も、しっかりと準備を整えてあるつもりだ。 流石に刀は仕上がっておらず、標準的なものを一振り渡された。それは甘んじて受けるしかない。
 初めてだからと準備を怠ったつもりはない。唯一、出雲の疲労が少し気になるが、眼に宿る光からするときっと保ってくれるだろう。
 まだ下っ端の雄司は先頭でもしんがりでも、また司令塔の護衛を務めるど真ん中でもない、要は重要な役の無いどうでもいいような場所を走っていた。ほとんど、帰って来た道を再び後戻りしている。このまま行くと、本当に親の家にぶちあたってしまう。嫌な予感しか、しない。
(どうか、間に合え…!)
 下手に出雲の速度を上げすぎても途中でへばりかねない。何より、一個人が隊列を崩すことは許されない。

 途中から、燃えている木が目に付き始めた。もしかすると、豊臣が先に着いてしまっているのかもしれない。もしそうだとすると、村民全員の捕縛は絶望的だ。もし遅れたならば、その時は血の海を見る事を覚悟しなければならない。流石の雄司も、それを我慢できる気はしない。

 森の隙間に、煙が見えた。
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