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青一点【BSR】

第2章 初陣の日


 やはり痛みだした体でやっとのこと兵舎に辿り着いた。馬を繋ぎ荷物を部屋に置きに行く。部屋には色々な家財道具や蒼い着物などが既に用意されていた。
 帰還の報告をするため、早速着替えて城に赴く。兵舎から城まで行くのにさほど時間はかからないのだが、道中大量の刀や旗をせわしなく運ぶ兵が何人も見受けられた。これは何事か。
「雄司、只今戻りました」
 報告とはいえ、直接幹部に会いに行く訳ではない。兵士の管理をしている者に帰還の旨を伝えて終わりだ。方法は間違っていないはずなのだが、言うなり係の者に睨まれた。
「雄司…ね。あんた、帰ってくんの遅すぎじゃねっすか」
「はい?」
 これが上下関係なのだろうか。下の者は家族との別れを惜しむ暇もなく帰って来いと言っているのだろうか。雄司は少し苛立った。
「いやね、見たとおり今戦の準備してるんすよ。なんでも、北の方で一揆があったとかで。あんたの家、そっちの方なんじゃないの?」
「いえ、全く知りませんが」
「あんたの親も関係してるかどうか知らないけどね、豊臣が来ちゃう前にすぐ出陣しなきゃならん訳。ちなみに、新兵は全員参加だから早くね」
 聴くが早いか、雄司は飛び出して準備に向かった。
自分の家の方面で一揆!親が関わってるかどうかは解らないが、もし自分たちより早く豊臣が到着してしまったらどうなるか?

 ―――明白である。皆殺しだ。

 そんな事は絶対にさせてはならない。自分一人が今急いでも仕方がないのかもしれないが、恐怖に震える心を何もせずに抑える事が出来なかった。
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