第2章 初陣の日
その後、四人で食卓を囲み、粛々と質素な食事を食べる。
(いつか、もっと旨ぇもん、食べさせてあげるからな)
かつみの言葉が、ぐわんぐわんと頭に響く。
戦う勇気が、ついたような気がした。
三日後―――――
輝月は出雲に跨り、再び城へと出発しようとしていた。
見送りは、かつみと両親の三人のみ。しばしの別れを惜しみ、一人一人と言葉を交わす。
「じゃあね、輝月ちゃん」
「うん、短かったけど、ありがとう」
いつもは気丈なかつみも、涙ぐんでいるようだった。
「たまには顔出すんだぞ」
「お休みとれたらね」
父は、いつもと変わらずやわらかく微笑んでいた。
「向こうでも、頑張るんだよ」
「うん、絶対に死んだりせんから、安心してな」
母も普段と変わらない温かい微笑みをくれた。
輝月にもじわりと寂しさが込み上げ、しばらくの間、ぽつりぽつりと会話をした。
やがて、輝月は「もうそろそろ行かないと」と緩やかに出雲を歩かせ始める。
振り向けば、彼らはまだ手を振って見送っている。さらに離れても、親は豆粒のように存在していた。こちらから見えなくなるまで、親はずっとこちらに手を振っていた。
病気の親が精一杯張り上げる、弱弱しくも強い『いってらっしゃい』の声が、いつまでも聞こえていた。