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青一点【BSR】

第2章 初陣の日


 手頃な木に馬から引いた紐を結わえ付け、荷を下ろして肩に担ぐ。その重量が肩に痛い。これから両親に告げる事を想像すると、さらに重くなるようだった。

 あまり身体を動かせない両親は、大抵寝ているか縁側に座っているかのどちらかである。今日は曇っているから寝ているかと思いきや、二人は縁側に座っており、不意を突かれて少々驚いた。
「今日、帰ってくる気がしてね」
「…ただいま。母さん、父さん」
「ええ、おかえり、輝月」
「合格、…したんだね」
「うん」
「しばらく、『出稼ぎ』なの?」
「…うん」
「そうか… 寂しくなんな」
「いつ行くの? もう、すぐ明日かい?」
「いや、三日くらいいるよ」
「そーけぇ」
 普通の会話のはずなのに、何故か気まずくてしょうがない。申し訳なさと寂しさが同時に込み上げてくる。
「荷物先にまとめて、のんびりする」
「うん、それがええけ」

 荷物をまとめるといっても、増えるのは着替えとサラシくらいのもので、大して内容が変わるわけではない。当然一瞬で終わってしまう。箱が開いてしまわないように、紐でぐっと括ってお終いだ。
 しかし、なんとなく親と顔を合わせる気になれなかった。
自宅の年季の入った香りに安心し、畳に寝転がる。
(ご飯と… 馬と… あと………―――――)
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