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青一点【BSR】

第2章 初陣の日


 痛む体に鞭打って川から歩きだした。雄司の家は山の上にあり、道が少し険しい。体力がどんどん削られていくが、ここはすでに見知った土地、勝手は分かっている。半刻も経たないうちに見慣れた小屋が見つかった。
「あそこだ、出雲。俺の家」
 女がちょうど家から出てきた。雄司の姿を認めると、「輝月ちゃん!」と手を振った。

「へぇ、お仕事合格できたの」
「何故かはわかりませんがね」
「合格したんだから、理由なんて考えなくていいべさ」
「それもそうだね」
 彼女の名は「かつみ」といい、一週間に一、二回やってきて、作り置きの料理をしていってくれる、山の下に住む若い娘だ。(変換はできません)
 雄司が出かけていても、両親の面倒をたまに見に来てくれるように頼んである。
 雄司が軍に入るこれからはもっと頻繁に訪れてもらわねばならないことになるが、かつみは快く承諾してくれた。
「てこたぁ、輝月ちゃんはやっぱり向こうに『出稼ぎ』行っちまうのか?」
「…そうなるね」
 軍について、親には言わざるを得なかったが、彼女には一応内緒にしてある。
 もしどこかから話が流れてきて、女であることがバレたら面倒な事になるであろう事が推測できるからだ。『出稼ぎ』というのも、嘘は言っていない…はずである。
「そっかぁ、寂しくなるね」
「母さんと父さんのためだ、しょうがないよ」
「うん… それはそうだどもなぁ…」
「ほら、二人にも報告してこないとだからさ」
「おう、言ってくるといいべ」
 解っている。いくら親のためだとはいえ、家を離れる事が親をどれだけ悲しませるかなんて。
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