第2章 初陣の日
翌朝、雄司は家への道を馬で走っていた。
行きは城下まで借りた馬を使ったが、今度は伊達軍の自分の馬を使っている。黒毛で、少し背の低い馬だ。雄司はその馬を出雲と名付けた。
(※馬の名前はNAME4で変換できます)
速さが自慢な伊達軍は、必ず一人に一頭、馬が与えられるのだ。抱える馬の数は数知れない。そのため、世話係に費用がかかりすぎ、馬の世話をするのは自分たちとなっている。兵舎に人数分の馬が用意されており、雄司が選んだのがこの馬だったという訳だ。
他の誰よりも早く出てきたものの、雄司の家は遠い。もうすでに数刻ほど経っているかもしれない。
「出雲、もうちょい頑張って」
雄司は出雲の首をさすってやった。
「あとちょっとで、川に着くからな。そこで休むから」
ざばっと無造作に顔を洗う。びしょ濡れになってしまったが、そんな事を気にする必要はない。
「ごめんなあ、疲れた?」
出雲は一心不乱に水を飲んでいる。雄司は微笑んだ。馬から下ろした荷から握り飯を取り出し、かぶりつく。具はネギ味噌のようだ。あの小十郎が作ったとは思えない、全く辛みのなくやわらかいネギだ。旨さが身に沁みるようで、夢中になって平らげた。
馬に乗るというのは存外疲れるものだ。そしてそこかしこが痛み出す。実は雄司も相当な痛みに耐えているのである。
雄司は痛む体を立たせ、荷物を背負う。
「ここからはすぐだから、出雲、歩こう。俺も荷物ちょっと持ってやるから、な?」
出雲はブルルと返事をした。