第1章 選抜試験
その後猛烈に喉が渇き、厨房を探しに行って水を存分に飲ませてもらった。すっかり満腹になり、部屋に寝転がって寛いでいる。消化に悪いとは思うが、動きたくない。
「入るぜ」
「え」
何者かがいきなり部屋に入ってきた。見ると伊達政宗ではないか。
自分は寝転がっている!
「はっ申し訳ありませぬ政宗様っ」雄司は慌てて居直った。
「気にすんな」
どちらかというと、彼の背後で青筋を浮かべている小十郎の方が怖い。
「というか呼び出されるんじゃ…?」
「Ah、思ったより少なかったんでな」
…何がだろう?
「じゃあ雄司、本題に入らせてもらうぜ」
「はッはい」
小十郎が歩み出て、懐から小刀を取り出した。あまり実用的とは思えない小ささだ。
「その小十郎が持ってんの、俺らの中の『婆沙羅』を増やしてくれるっていう鋼でできてんだぜ」
「ばさら?」
「要はこういうのだ」
そう言うと、政宗は手を出し力を入れる。指の間でバチッとなにか光のようなものが弾けている。もしかして巷で噂の『えれき』とかいうやつだろうか。
「俺と小十郎はまぁ… えーと… 何だ」
「雷のようなものですな」
「おう。で… その素質がありそうなやつにそいつで試してまわるのさ」
「俺がですか」
「ちょっとでもその兆候があったら、試してみるだけ試すのはいいだろ」
小十郎が小刀を差し出す。雄司はよくわからないままとりあえず受け取るが、特に変わった様子はない。
「??」
「ちゃんと両手で持って、全身に力込めろ」
「何が来るか楽しみだな」
「ちなみにお二人の他には?」
「シゲが風で、鬼庭が氷と… あとちょっとずつ使える奴らがたくさん」
「へぇ」
「いいからやってみろ」
「はい」
腕を伸ばし、両手でしっかりと握りしめる。
そして一気に力を込め、念じる―――