第1章 選抜試験
そして、雄司は再び政宗に突っ込んでいく。今度は政宗は攻撃してこようとはしない。ただ無表情に、一撃一撃を丁寧にいなし、防御に徹しているのみだった。
どれだけ打っても手応えのないことに雄司は次第にいらついてきた。
「雑になってきてるぜ」
無表情のまま、政宗がぼそりと言った。雄司は動揺して跳び退る。
「どうした?」
「いえ…すみませぬ」
「…まぁいいか」
政宗は頭を掻きながら雄司を見つめた。
「ちょっと呼吸が乱れてんな、もっと体力つけろよ? あと力。速さは…まあまあだな」
「ありがとうございます」
「じゃあ次は俺から行くぜ、受け切れるもんならやってみな!」
「は……―――――――ッ」
言うが早いか、政宗はいきなり懐に飛び込んできた。
雄司はとっさの判断で二刀を交差させ防御する。それでも、政宗の攻撃は重かった。
「正面はやりやすいだろうが… それだけじゃ防げねェ!」
「うぁ!?」
政宗は雄司の後ろや横に回り込み、連続攻撃を仕掛けてくる。防ぎにくい場所にとっさの無理な格好で防御するため、ほとんど弱められない。もしくはそのまま打たれる。
「くうぅ…!」
「無理な姿勢はすんな、骨イくぞ」
「つったってですね…!」
やせ我慢でぎりぎりとしばらく耐えていると、やがて政宗は力を抜いた。
「はぁ… もーいーぜ、お前」
しばらくかかっていた負荷がふと軽くなり、雄司は少しよろめいてへたりこむ。
「午後にまたここに来な、他もまとめて呼ぶから。じゃ、一旦部屋戻れ」
「え? はぁ…?」
へたりこんだまま曖昧に返事をしていると、小十郎に首根っこを掴まれて引きずられる。
「おめぇの審査は終わりだってことだ」
「まっ………ぐっ…るひ」
「おらよ」
稽古場の入口まで引きずられてきたようだ。お陰でせっかくの蒼が土で汚れてしまっている。
「えっと…」
「まさか、来た道覚えてないとか… 言わねぇよな?」
「!!!?」
そういう事か!!
小十郎は笑みを残して戻っていく。雄司は一人取り残された。