第2章 離れる気持ちに
マンションの前までついた。
「じゃあ、ありがとうね。またね。」
「待って。」
「え?」
がんちゃんに呼び止められて振り向くと、いきなり顔が近づいてきた。そのまま、そっとキスをされた。
あまりの突然な出来事に固まった。
「じゃー、またね。」
「え、あ、うん。じゃあね。」
エントランスに逃げ込むように走った。一瞬何が起きたのかわからなかったけど、自宅に帰って敬浩の顔を見た途端に、現実に戻った。
急に、やましい気持ちでいっぱいになった。
「あれ、先帰ってたんだ?」
「…。何か顔赤くね?まだ酔ってんの?」
敬浩の手が私のほほに触れる。
「うん!今日は少し飲みすぎた!じゃあ、おやすみ!」
「…。待てよ。」敬浩に腕をつかまれた。いつになくしつこい。
「なに?あ、そうだ。美冬さんは?今日はお泊まりかと思った。」
「…。ぷ。(笑)」
突然笑いだす敬浩。
「なによー。なんか、感じ悪いなぁ。」怪訝な顔で敬浩をみつめる。
「お前、ほんとわかりやすいなー。がんちゃんに何かされた?」
「う。。」
さっきの出来事が脳裏に浮かんだ。一気に顔があつくなる。
「おっ。図星か。なに、家に連れ込まれてやらしーことでもされた?」
敬浩の顔がどんどん近づいてきた。
顔と顔が近づいて、思わず顔を背けた。
「。。まじか。。」
少し驚いた顔を見せた敬浩。
「キスされただけだよ。」
「キス?」大きな目をいっそうまん丸く見開いて私を見つめる。
「ご、ごめんなさい。。。」
「ぷ。(笑)なんであやまんだよ。別に悪いことしてねーじゃん。俺の女じゃねーし。美冬さんに手出したら、いくらがんちゃんでも許さねーけど。」
「…。それ、本気で言ってる?」
感情が溢れでそうになった。
今まで、人に見せたことのない感情が涌き出てきて、敬浩を睨み付けていた。
瞳からは涙が溢れた。
そんな私を見て敬浩が困った顔をした。
「ご、ごめん。そんな、泣くなよ。ちょっとからかっただけだろ?ほら、こっちおいで…」
私を必死になだめようと手を引っ張り抱き寄せる。
「やだ。離して…。」この世で一番、愛しい人の腕を
拒んだのは、これが初めてだった。