【C翼】若林くんと補習で同じ教室になった件 他【短編】
第2章 ハッピーバースデー2018
若林の誕生日の事情を聞きながら2人と1匹は社のある丘の上に上りついた。
「まぁ、座れよ。疲れただろ」
言われるがままに南葛市が一望できるところにドリ子は三角座りで地べたに座り込んだ。そしてその横にジョンを抱きかかえるように若林が腰を下ろした。
夕陽が海に沈んでうっすらとしたオレンジ色の光が夜空の濃い藍色と混ざり合ってグラデーションを作っていた。町の明かりと船の明かりがイルミネーションのように光っていた。しかも周りには誰もいない。
少し肌寒くなったドリ子はひざを縮こまらせた。
「貸そうか?」
それを見た若林はぎゅっと抱きしめたジョンをドリ子に差し出してきた。
「けっこう温かいんだぞ」
黒くて丸い目の犬が尻尾を振りながらドリ子の膝の上に乗ってきた。そしてドリ子はその犬を両手で抱きしめた。柔らかくてふさふさしてて、たしかに温かい。
これは間接ハグだとドリ子は思った。
この体温がさっきまで抱きしめていた若林の体温なのかそれとも元からのジョンの体温なのかよく分からなかったが、まるで若林本人に抱き付いているかのような錯覚を感じさせた。若林のにおいも幻臭として感じたような気もした。
「ところで」
ジョンを抱きしめて悦に入っているドリ子に若林が問いかけてきた。