【C翼】若林くんと補習で同じ教室になった件 他【短編】
第2章 ハッピーバースデー2018
白い犬のジョンを先頭に若林とドリ子は丘の方まで歩いて行く。上り坂になっていてちょっと大変だ。
「ゆっくり散歩してこいって兄貴達に言われたんだ」
石畳というにはごつごつした作りの階段を一段ずつ登って行く。
「サプライズか何か考えてるんだろうな」
若林は嬉しそうにふっと笑いながら進んでいく。
若林家レベルの家庭であれば家じゃなくて、外で豪華なものを食べて誕生日をお祝いされてそうなイメージがあったがそうでもないらしい。意外だとドリ子は返事した。
「きっと今年は特別なんだ」
そう言った若林の顔は真剣だ。
「来年、ドイツへ留学するんだ」
ああ、やっぱり本当だったんだ。若林が留学するという話しは学校で噂になっていた。
「多分、日本で誕生日を祝ってもらうのは今日で最後になる。あの雰囲気だと、じいさんばあさん、いとこまで親戚全員集まってそうだな」
困ったようで嬉しそうな表情をしながら話しを続けた。
よくよく考えてみれば、南葛の名士の子供が12才で海外に行ってしまうのは割と一大事である。家族でレストランに行くとかそういうレベルの話しじゃなかったのだ。