第11章 11Qー焦心
「名前っちー。お疲れ様ッス!」
部活終了の挨拶が終わりタオルで額の汗を拭いていると、後ろから聞き慣れた声が掛かった。
「あ、黄瀬…。」
「やっぱ 名前っち凄かったッス!
全然真似出来ないんスもん…。」
そう言い困った様に笑う黄瀬。
「追い越されない様に頑張るよ。」
「なんスかその余裕っぷりーー!
可愛いッス!!」
「は!?意味わからん。」
ただでさえ近かったのに、更に接近しようとした黄瀬を両手で突き放し、近くに掛けてあったジャージを羽織る。
「てか今日一緒に帰えらないッスか?」
「私外周して帰るから無理。」
「あれ、名前っちミスなかったッスよね?」
確かに今日も、一つもなかった。
しかし私は相変わらずミスの多い兄と、毎日自ら進んで一緒に走っている。
「こいつの付き添い。」
私はいつの間にか隣に来ていたテツヤを指差す。
「うぉ!?いつからそこに!?」
やはり見えていなかったか…。
「どうも。」
存在感が無さ過ぎて驚かれているのにも関わらず、平然とした顔で挨拶をするテツヤ。
「てか付き添いって…。
名前っちこの人とどういう関係ッスか!?
ハッ!…まさか彼「「双子です。」」
数秒の沈黙後、黄瀬の驚きの声が体育館に響き渡った。