第18章 18Qー緊張で言葉が出ませんです
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私はベンチの中でドキドキしていた。
理由は、あの帝光中学バスケ部の試合を生で、しかもこんな間近で見られるからだ。
黒バスファンなら喜ばない者などいないだろう。
ピーーーー
試合のホイッスルが吹かれると同時に、両チームのジャンパーが高く飛ぶ。
ジャンプボールを取ったのは帝光。
マイボールにしてからの展開は非常に素早く、初得点をするまでに所要した時間は、10秒にも満たなかった。
しかし、ゴールまでの動作一つ一つに無駄がなく、綺麗に仲間にボールが渡っていく。
「これが帝光中…。」
私は呆気にとられていた。
練習では何度も見た光景のはずなのに、他校の試合となると、動きも全て違って見えてくる。
華麗なプレーに、感動、そして悔しさすら感じた。
「かっけーよな。」
隣に座っていた堅吾さんが横目で私を見ながらそう言った。
「はい…。なんか…、バスケに対する意識がだいぶ変わりそうです。」
言葉では上手く言い表せないけど、自分が持っていたバスケに対しての考えが一変されるような気がした。
「言いたいことわかる。あいつらはマジでスゴイよ。」
コート内の同期を優しい目で見つめる堅吾さんを横目で見遣る。
まぁ、堅吾さんも相当凄いですけどね…。
そう思ったけど、言葉に出したら調子に乗りそうだったのでやめておいた。
先輩のプレーを見逃すまいと試合を集中して見る。
虹村さんの素早くも力強いポールさばき、守さんのなめらかなシュート。
私は既に帝光中の先輩たちに魅了されていた。
56点目を入れたところで、2クオーター終了の笛が鳴った。
ベンチに戻ってきた先輩たちにタオルとドリンクを渡す。
監督は、今の得点を見ながら頷いた。
「十分だな。2,3年は春休みの特訓の成果が出ているようだ。」
そう言ってから監督は、ベンチに座っている先輩たちから、私たち1年生に目を移した。
「3クオーター目からは一年を出そう。」