第1章 1Qー水色の
「おはようございます。」
「………ぶふぉっっ。」
声の方を振り向いた私は食べていただし巻き卵を吹き出してしまった。
少し待ってくれ。
なんなんだこの状況は。
まず第一に私は三人家族のはずだ。
なぜもう一人この家にいる?
そして何故コイツは髪が水色なんだ?
というか私、コイツ知ってる…。
…いやでもありえない。
「名前、汚いですよ。」
呆れたように言いながら私の隣に座る水色の男の子。
「テツヤおはよう。名前ったら変なこと言い出すのよ~もぅ。」
開いた口がふさがらないというのはこういうことを言うのか。
私は口をパクパクさせながら隣に座る“テツヤ”と呼ばれた男の子から目を晒さずにはいられないでいた。
「そんなに見られたらご飯が喉を通りません。」
味噌汁を啜りながら、横目で私を見る“テツヤ”。
そんな私たちを不思議に思ったのか、お父さんが「テツヤの顔がそんなにおもしろいか?」と聞いてきた。
「いや…。ちょっと…。」
アハハと引きつった笑いをしながら早急に食事を済ませ、急いで自分の部屋に駆け込む。
間違いない。
あの水色の髪の毛。
誰に対しても揺らぐことのない敬語。
本棚に大量に詰まっている少年ジャンプを片っ端からパラパラと捲っていく。
しかしどこを探しても
“黒子のバスケ”という漫画は見つからなかった。