第3章 3Qー始めての温もり
「って!!名前っちじゃないッスか!!!」
私の名前を言いながら顔をパァッと明るくさせる黄瀬涼太。
何故こいつは私の名前を知っている?
しかも何々っちって認めた人にしか付けないんじゃ…。
つかこいつもまたでけーな…。
ふと今黄瀬涼太の腕の中にいることを思い出し、思わず両手で突き放してしまう。
「あっ…ごめんなさい。」
「もうひどいッス! すげー探したんスよ~!」
ふくれっ面をしながら私を見下ろす黄瀬涼太。
「……犬。」
そう黄瀬の顔を見ながら言ったと同時に聞こえてくる私の名を呼ぶ声。
「あそこにいたぞ!!!」
「黄瀬くんと一緒よ!!」
私を指差しながら走ってくるクラスメイトたち。
「げっ。」
私が苦虫を噛み潰したような顔をしてから走り出そうとすると黄瀬に腕を掴まれた。
「やっと見つけたのに逃げないでほしいッスー!」
掴まれた腕が結構痛い…。
そうしてる間に私たちに追いついたクラスメイト。
「なんで逃げるんだよー!」
「えっと…びっくりしたので…。」
何故追っかけるのかとこっちが聞きたい。
「私たち黒子さんと話したくて…。」
「私と…?」
一斉に頷くクラスメイト。
じゃあ何故突進してくる!!
心の中で盛大な突っ込みをする。
「とりあえず…ここじゃ何だし、教室行かねぇッスか?」
苦笑いをしながら周りを見渡し言う黄瀬涼太。
1-Aの廊下での追いかけっこ騒動を聞きつけた野次馬、プラスきゃーきゃーとうるさい黄瀬のファンが私たちを取り囲んでいる。
黄瀬って本当にモデルなんだなと呑気なことを考える私と、そのモデルの黄瀬、そして物好きなクラスメイトの数十名で教室に向かった。