第17章 17Qー動き出す歯車
「まあでも…送ってくれてありがと。」
一応お礼はしておくべきだと思い、玄関のドアノブに手を掛けながらそう言うと、少しの沈黙後青峰はふっと笑って言った。
「おう。じゃーまた明日な。」
「うん…。」
足音が離れていったのを確認し、私は玄関の前で一つため息をつく。
「青峰くんとデートだったんですね。」
背後からひょこっと顔を出しそう言ったのは、水色の髪色をした男の子。
「テテテテツヤ!」
「テが多すぎます。」
可愛い可愛い私のお兄さんは少し不服そうに言った。
誰よりも早くテツヤのことを見つけられる自信はあるが、こう気を抜いたときに来られるとやはり驚く。
「ごめんごめん。
…それよりその大きい紙袋何?」
テツヤが抱えている大きな茶色い紙袋を指差しそう言うと、あぁこれは…と言って紙袋を開け、白地に黄色いラインが二本入った飲み物らしき物を取り出した。
「この間名前が言っていたので買ってきたんです、マジバのバニラシェイク。」
嬉しそうに言い、シェイクを飲み出したテツヤ。
紙袋の中を覗くと3本同じ物が入っていた。
「…それにしても買いすぎじゃない?」
「名前と一緒に飲もうと思って。」
テツヤは紙袋の中から一本取り、私に差し出す。
なんなんだこいつは。
可愛すぎる…!
抱きつきたい衝動を抑え「ありがと。」とお礼を言い、玄関の扉を開けた。
「ただいま〜。」
「ただいま帰りました。」
私の気の抜けた声と、何時もと変わらぬテツヤの律儀な挨拶を聞きつけリビングから出て来たお母さん。
「おかえりなさい!
2人で出掛けてくるなんて仲が良いのね!お母さん嬉しい!」
母がそう満面の笑みで言いリビングへ戻って行った後、言い返す間もなかった私たちは2人で顔を見合わせ笑い合った。