第17章 17Qー動き出す歯車
そのあと数分程度話した後、彼はそろそろ出発する時間だと言って帰って行った。
何故あいつがここに…。
荻原シゲヒロ。
私が元居た世界での名前は‘‘波田野雄也”。
才能が開花してからも、何の偏見も持たず何時もバスケをしてくれた唯一の‘‘仲間”。
中学三年生のときに突然引っ越してしまい、それから1度も会っていなかった。
でも何故…
こちらの世界に、しかも‘‘荻原シゲヒロ”という名前で存在するのか…。
「なにぼーとしてんだよ。」
よく響く低い声によって、私は現実に引き戻された。
ベンチに座りながらその声の方を見上げると、少し汗をかいた青峰が立っていた。
「アップは済んだぜ。」
ニヤリと笑いながら、どこか楽しそうに言った青峰。
荻原君のことはいくら考えたってきっと無駄な行為に違いない。
自分にそう言い聞かせてベンチから立ち上がる。
私はまだアップをしてないからハンデをくれと言ったら頭を小突かれた。