第16章 16Qー初めての味は
一歩踏み入れたそこは、コンクリートが太陽の光を跳ね返していて眩しいけれど、とても暖かい場所だった。
「今日晴れててよかったッスー。」
大きな伸びをして言う黄瀬の姿に、思わず笑みが零れる。
だって朝あんなに泣いてたのに…。
思い出しただけで笑いが…。
どうしたんスかと聞く黄瀬に、なんでもないよと笑いを堪えながら返し、柵の前に一つポツンと佇むベンチへと向かった。
座る際手を差し伸べられ、結構紳士だよなとついつい感心してしまう私。
「ありがと。」
「レディーファーストッス。」
よくもまあこんなキザな台詞言えるよなと思うが、違和感が無いのは黄瀬だから。