第15章 15Qー現実逃避
「………ん…。」
ぼやける視界の中見えた白い天井。
段々とはっきりとしていく意識。
ドラマの主人公が倒れた後、目が覚めると病室の天井が見えた…ってよくあるパターンだ。
もしかしたら記憶も消えてたりしてと縁起でもないこと思う私。
しかし倒れたときのことは覚えているし、自分の名前も分かるのでそれはないと確信する。
重い身体を少し起こすと、 私の傍でベッドに伏せている母の姿。
「…お母さん。」
スースーと規則正しい呼吸が聞こえ、寝ているのだということを把握する。
歳の割りには張りの良い母の頬は、涙で濡れていた。
また迷惑かけちゃったな…。
私のバスケが世間で誹謗中傷されたときのことを思い出す。
『名前のことはお母さんとお父さんが守るから。』
そう強い瞳で言った母は、誰よりも強く誰よりもかっこよかった。