第3章 第二部三年越しの思い
怒っても、万理さんは笑っていた。
「なんで笑っているんですか」
「いやぁ、マナの初めてが俺で嬉しくて」
「この変態!」
なんかムカつく。
どうせ私は恋人が音楽と服だった寂しい人間だわ。
「私だって、床上手じゃないですけど。夜の遊びの経験はあるんですからね!」
「は?」
「貧乏学生時代は、キャバ嬢として中々だったんです。そうだ。この際新しい就職先はキャバに…」
「ないから!何言ってんの!」
今の私は定期的に収入を得る方法がない。
大学を辞めた以上は、自分を売り込む場所を探さないとダメだ。
「永久就職したらいいから大丈夫だよ」
「何?」
「これサインしてね」
そう言いながら差し出されたの一枚の書類。
「見間違いでしょうか?婚姻届けって書いてますが」
「うん、そうだよ」
「そうだよって!」
何で急に婚姻届け?
「君が病院に運ばれた後も俺は病室に入る事は出来なかった。それにこれからの人生で俺の隣に君がいないのは考えられない…本当はあの日にこれを渡すつもりだったんだ」
そう言いながら差し出されたのは既にボロボロになった箱。
「三年前だから包装紙焼けて、リボンも酷いけど」
開けると、小さな箱には。
「指輪…」
「クリスマスに渡すつもりだった。その…婚約指輪」
「嘘…」
指を手に取り私の指にはめてくれた。
サイズはぴったりだった。
「良かった」
本当にぴったりだった。
「万理さん…私」
「うん」
すごく嬉しい。
万理さんが私に指輪を送ってくれたことがすごく。
「マナ…俺は」
「でも私、万理さんに何もしてあげられないかもしれない。こんな体だし、万理さんを幸せにする自信はないです」
「ええ!」
あの日私は万理さんを幸せにしたいと思った。
笑顔にしてあげたいと思ったけど。
「あの日万理さんに言った言葉は撤回します。私、万理さんを幸せにできないと思います」
「ちょっと…待て待て!」
私はきっと、貴方を幸せにできない。