第2章 第一章失踪と置手紙
相手は事務所の所属タレントだ。
しかも女性に手を上げるなんて真似できるはずもない。
ないのだが…
「大体向こうからいなくなってくれたんだからいいじゃない。あんな障碍者!」
「酷い…そんな」
この時俺の中で何かが切れた。
「君、何か言ったのか」
「えっ?」
自分でも解る。
かなりドスの利いた声がしたけど、抑えられなかった。
「私は、万理さんの為に…貴方にいい加減付きまとわないように言ったのよ。怪我で同情弾くなんて最低だって…」
「ふざけるな!」
同情?
そんな事を言ったのか?
「俺は好きで彼女の傍にいるんだ。付きまとう?俺が先に好きになって、傍にいたくて一緒にいて…病院に通っているのも俺が好きでしているんだ…彼女が好きだから」
「万理さんは優しいから面倒見ているだけでしょ?邪魔なのに邪険にできないから…だから」
「俺の何を知って言うの?何も知らな癖に勝手な事を言わないでくれ…俺が好きで彼女といるんだ。俺が好き優しくしているんだ。俺はマナだから優しくしたいんだ」
ただでさえ不安定なマナにそんなことを。
手紙には短く俺への謝罪と幸せになって欲しいと書かれていた。
「俺の夢には必ず彼女が隣にいる」
「そんなの…」
「もし彼女に何かあったら許さない…君を恨むよ」
これ以上の会話は無意味だった。
今言っても彼女の耳には入らないだろう。
「万理さん!」
「紡ちゃんは家にいてくれるかな?」
「でも!」
もう遅い時間だ。
高校生の紡ちゃんを夜の街を出歩かせるわけには行かない。
「もしかしたら連絡が来るかもしれないしね?」
「解りました。必ずマナお姉ちゃんを連れ戻してくださいね」
「任せて」
サヨナラなんて絶対許さないから。
君は俺を幸せにしてくれるって言ったじゃないか。
なら傍にいてよ。
じゃないと俺は幸せになれないよ。