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未完成な僕ら

第1章 プロローグ







「そんな…」

全てを知った俺は真っ青になった。

「万理さん、この子を一人にしないで…お願い」

「俺は…」

「もう貴方しかいないの。この子を支えられるのは」

沢山の物を奪われ続けた傷だらけになったマナちゃんの思いは俺には計り知れない。

けれど、その一方で。



最後の砦が俺だと言われたことが嬉しいと感じた。


なんて最低なんだ俺は。


「私ではこの子を救えない…できるのは貴方だけなのよ」


懇願するまどかさんは普段の強気は見えない。
それだけマナを大事にしているのが解るし、少し妬けてしまう俺はどんだけだと思った。

けれど俺もまどかさんと同じように必要とされていると思っていいのだろうか?



俺に出来ることは少ない。

それでも自分が今すべきことは一つだった。


「悔しいけど、あの子がもう一度歩き出したのは貴方のおかげなの。貴方を幸せにしたい。喜ばせたいって言っていたわ」

「俺を…」

「昔のあの子は本当に前向きで強い子だったわ…でも心に傷を負って、音楽を辞めたけど。貴方のおかげでもう一度歩き出したの」


思いだを懐かしむように告げるまどかさんの横顔は慈愛に満ちた表情だった。


「他の誰が止めてもダメなの…貴方の言葉なら聞くはずよ。だからお願い…あの子を一人にしないで。一人で泣かせるようなことはしないで」

「はい」


俺には何をしてあげられるか解らない。

でも――。


『貴方に不幸は似合いません』


傷ついた俺に手を差し伸べ幸せをくれた。

何時も君は俺を守ってくれた。

本当にやることなす事、予測ができず。
振り回されることは多かったけど、誰よりも優しい君の手を離せるわけがない。


俺を幸せにしたいと言うなら。

この手を離さないで。

俺の幸せは君の隣なのだから。



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