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未完成な僕ら

第2章 第一章失踪と置手紙






意識が戻ってから三日。
毎日のように万理さんはお見舞いに来てくれたけど、忙しい合間に時間を作ってくれているのは明白だった。

事務所から病院まで距離もあるし、度々バスを乗り継いできてもらうなんて悪い。

最近では所属タレントも増えたとか。

そんなある日の事。


ノックも無しに人が入って来た。
万理さんやまどかちゃんならばまずありえない。

「あのどちら様ですか?」

見慣れない人で私とそう年も離れていない女性だった。

「あの…」

パァン!

乾いた音が響く。

「えっ…」

「アンタ、いい加減にしてよ!」

無言だった女性は私の頬を引っぱたき、怒りをぶつけた。

「万理さんの邪魔をして、甘えて…これ以上あの人に迷惑をかけないで」

「は…あの…貴方は何方です?」

「私は小鳥遊芸能プロのタレントよ。アンタどれだけ彼に迷惑を掛ければ気が済むのよ…たいした怪我でもない癖に彼の弱みに付け込むなんて最低よ」


涙を浮かべながら私に告げられた言葉は敵意に満ちていた。

「私は付け込むなんて…」

「万理さんはアンタの所為で、休む暇もなく働いて…大事な営業も棒に振ったのよ!研修だって断って…聞けばアンタを一人にできないからだって!」

万理さんの仕事…

大事な研修を断った?

「意識が戻ったんなら消えてよ!アンタはいるだけで周りの人間が迷惑なのよ…少しでもあの人を思っているなら消えて。彼の人生を邪魔しないで!」


私が知らない所で万理さんは大きな心労を与えていた?

良くかんげれば解るかもしれない。


「私達の邪魔をしないで」


あー、そうか。
彼女は万理さんの事を…そして万理さんも。

「貴女は万理さんと…」

「そうよ。アンタがいる手前、優しい彼は…」

「解りました」

「え?」

三年間は長い。
その間に万理さんは私を見捨てようとしなかった。

愛は無くても情があるから見捨てるなんてできなかったのかもしれない。

だってあの人は優しいから。

ならもう開放してあげないと。

「もう彼の前に姿を見せません。お約束します」

「そう?ならいいわ。早く消えてよね」

「はい」

行く場所なんて何処にもない。
でも消えなくてはダメだ。

大好きな人の為に。


病室を去って行く彼女の背を見て私はその日のうちに決断をした。

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